『となりの脳世界』村田沙耶香さんのエッセイ集の感想やあらすじを紹介します。
『コンビニ人間』で有名な村田沙耶香さんがどんな考え方を持ったか方なのか気になりますね!
この記事ではあらすじやこの本がおすすめな人、感想や口コミレビューを書いています。ぜひ参考にして下さい
となりの脳世界あらすじ
「自分ではない誰かの脳を借りて、そこから見える世界を、のぞいてみたいなあと、いつも思っています。」
人の数だけ脳があり、誰もが自分だけの脳を通して世界を見ているわけですが、村田さんはふと電車で隣の席に座った人などが今どんな光景を見ているのかと想像してしまうそうです。この本は、「誰かの脳世界を覗くのは、一番身近なトリップだ」と語る村田さんがご自身の「脳世界」を描いたエッセイ集です。
村田さんの幼いころの話や日常の話、好きなものの話、旅の話で構成されています。村田さんの作品を読んだことがある人はもちろん、読んだことのない人も楽しめる内容になっています。
となりの脳世界 感想口コミレビュー!
どこか変だけど、つい「あるある」と言ってしまう話の宝庫
たとえば、イベント会場等へ行くために降りた駅の改札を出たところで、「あ、この人も私と同じ場所に行くっぽい」と感じたことはないでしょうか。村田さんはよくそういう「っぽい人」について行ってしまう癖があるそうです。また、その癖ゆえに、ご自身が「あ、私いまあの人に『っぽい人』だと思われてるな」と感じることもあるといいます。
また、コーヒーショップで出されるカップのフタに小さな穴がありますが、そこからコーヒーを飲むのが苦手だと思っている人もいると思います。友人などと食事に行く際、自分以外の誰かが予約してくれた店に入るとき、店員さんについ「7時から〇〇で予約している……△△です」と、なぜか自分の名前を名乗ってしまうこともよくありそうな話です。
私などは日常にありふれすぎていてついつい忘れてしまっていた「あるある」たちを、村田さんは見事に語ってくれています。きっと村田さんはものすごく周囲に気を遣う方なのではないかと思います。村田さんの作品の中には、少し変わった自分を隠して周囲に溶け込もうとする主人公の姿がよく描かれています。
小説の登場人物は登場人物ですから、彼女たちがそのまま「村田沙耶香」さんだとは思いませんが、きっと分身たちなのだろうとほほえましくなりました。芥川賞受賞作『コンビニ人間』にも通じるコンビニ愛も、しっかりこのエッセイの中に描かれていました。本当に村田さんは、これは本当に誉め言葉なのですが、少し猟奇的なにおいのする天才だと思います。この思考は誰にも真似できないものです。
しかし私は一見変わった思考の奥に、人一倍周囲に気を遣う、優しくて真っすぐで純粋な村田沙耶香さんの姿を見た気がしました。これからもそんな村田沙耶香さんの作品を読み続けたい、そう思わせてくれた素敵な1冊でした。まず、「脳世界」という発想がすばらしいです。この1冊を読んで、村田さんの「脳世界」への小旅行を存分に楽しめました。
作者村田沙耶香さんプロフィール
2003年に『授乳』で群像新人文学賞を受賞されています。2016年に『コンビニ人間』で芥川賞を受賞された女性作家です。エッセイの中には、村田さんが授賞式に出席されたときのお話も載っています。授賞式での黒いドレス姿を見たことがある方もいるかと思いますが、そこに込められた意味が、このエッセイを読めばわかります。
となりの脳世界こんな人におすすめ
村田沙耶香さんファンも、そうでない方も
村田沙耶香さんのファンにとってはまさしく村田さんの作品に通じるものを感じることができるので、ぜひ読んでもらいたい1冊です。村田さん作品は読んだことがないという方でも、サクッと読めてくすっと笑える読み物として十分に楽しめます。むしろ、こんな感性を持った作家が一体どんな物語を描くのだろうと気になるのではないでしょうか。
エッセイの中に村田さんの「好きなもの」の話が出てきますが、村田さんファンの方はもしかしたらものすごく「わかる!」のではないかと思います。特に私は「まっくら森のうた」の話に深く共感しました。「この歌が好きなことを、誰にも言わずに秘密にしていたくらい」村田さんにとって大好きな歌だったそうです。その感覚も、歌に対する思いも、なんだかすごく「わかる!」ような気がして、私自身のことを書いているのかと思ったほどです。
村田さんのことを少しでも好きだなと思っている方は、読むとさらに今まで自分が見てきた「脳世界」が広がったり深まったりすると思います。
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