爆弾犯と殺人犯の物語久保りこさんの作品を紹介します。
この記事では爆弾犯と殺人犯の物語のあらすじや気になる結末、感想を紹介しています。
爆弾犯と殺人犯の物語 あらすじ
「初めて出逢った夜、彼女の義眼に心を奪われた」
空也は偶然スマホを拾ったことで、左目に義眼を入れた女性・小夜子に出逢います。彼女の義眼に惹かれたことで空也は彼女を愛し、プロポーズします。会話を交わしていく中で、小夜子の左眼は二十歳の時に事故に遭ったことで失われたとわかります。その事故というのは爆弾を爆発させたことだったのですが、その爆弾を作ったのは、当時高校生だった空也だったのです。
空也は胸に秘密を秘めたまま結婚生活を続けていました。
そんなある日、「ひな」という中学生の少女が小夜子を訪ねてやってきます。この「ひな」という少女、実はあの爆弾事故の際、小夜子の傍にいた女の子でした。当時ベビーシッターのバイトをしていた小夜子は、「ひな」が爆弾の箱を開けてしまったことで、左目を失っていたのです。
もちろん、当時のことはほとんど覚えていない「ひな」ですが、訪ねてきたのはその件でありませんでした。「ひな」は、失踪した父親を捜すために、小夜子に会いに来たのです。「ひな」が言うには、「ひな」の父親は昔、小夜子と付き合っていたというのでした――。
爆弾犯と殺人犯の物語 みどころ
この作品は短編集です。「爆弾犯と殺人犯の物語」は表題作ですが、空也が空想してい
た物語として、作中に登場します。
秘密を持つ空也と、やはり人には言えない大きな秘密を持っている小夜子。この二人は、これから物語を紡いでいくために、一つずつ秘密を披露していくことになります。淡々と、二人はそれぞれの秘密を互いに明かしていくのですが、核心にはなかなか触れていかなくて、一体いつこの物語は完成するのだろうとハラハラします。
また、この物語は短編集ですが、それぞれの話がつながっています。そこもまた見どころです。
爆弾犯と殺人犯の物語 感想口コミレビュー
新しいタイプのミステリー
まず、小夜子が義眼になった原因の爆弾犯と、約10年後に巡り合って結婚するという物語展開が非常に新鮮で面白いと思いました。空也は自分の爆弾が原因で小夜子の左目が失われたとわかっても、義眼に心惹かれたまま結婚生活を続けていくのです。
それだけでは物語として盛り上がりに欠けるところですが、「ひな」の登場で小夜子にも大きな秘密があることがわかり、謎解きをしていく楽しみが増えました。
小夜子と空也の関係はとても不思議です。二人ともきっとロマンチストなのでしょうか、淡々と詩的な会話が続いていきます。まだ30代の若い夫婦ですが老夫婦を見ているような、なんだかおだやかな気持ちにさせられるふたりでした。
しかし、隠している秘密が秘密ですから、会話の内容はなかなか物騒です。「ひな」が
探している父親と小夜子の関係、また小夜子と空也夫婦とは別の恋人たちの物語など、
緩やかな緊張感を持って物語は進んでいきます。
こんな緩やかな調子で結局、「爆弾犯と殺人犯の物語」は完成するのか、最後までワク
ワクしながら読むことができました
久保りこ 作者プロフィール
新人作家さんです。
作者の久保りこさんは2021年に「爆弾犯と殺人犯の物語」で小説推理新人賞を受賞して作家デビューされました。つまり、この作品がデビュー作です。
デビュー作ながら推理小説ファン・恋愛小説ファンからの評価の高い方で、今後の作品に大きく期待できる作家さんです。
爆弾犯と殺人犯の物語 こんな人におすすめ
恋愛小説や推理小説が好きな方はぜひ
私は日頃から推理小説が好きでよく読みます。米澤穂信さん、辻村深月さん、森博嗣
さん、乾くるみさんなど、トリックや大どんでん返しに定評のある方の作品ばかり読ん
でいますが、今回読んだ久保りこさんの作品も、先ほど挙げた大作家さんと比較しても特別劣るということもなく、十分に読み応えのある作品でした。
推理小説としても面白いのですが、ふんわりと進んでいく恋愛小説としても楽しめます。少し違った趣向の推理小説・恋愛小説を読んでみたい方はぜひ、手に取ってみてください。
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