世界中で人気のあるSHEIN(シーイン)は、これまでアメリカにおいて奨学金を抱えた女子大生のような、経済的に余裕はなくても、おしゃれ心はあるといった若い女性の顧客を基盤としてきました。
今、アメリカの物価上昇率はようやく沈静化し、2022年12月には6.5%にまで落ち着きました。しかし、落ち着いたといえども、6.5%という高い数字です。日本と比較してみますと……..
日本の物価上昇率は、電気代やガス代の高騰で、12月期は、4.0%にまで達しました。人々は口々に政府の物価対策がなってないと批判し続けました。
4%の日本でこのレベルですから、アメリカ人がどれだけコロナ禍から続いている物価高に苦しんでいたか、察しがつくと思います。
もっとすごいのは、ヨーロッパです。とてつもない物価高が続き、ドイツやフランスなどの12月の消費者物価指数は、3ケ月ぶりに10%を下回ったというものの、9.2%の上昇となりました。
そんな中、世界中の物価高に悩む女性たちの熱い視線を一心に集めたのが、価格の安い中国系ブランドのSHEIN(シーイン)です。ここ数年についていえば、毎年約1兆円ずつ売り上げを伸ばしているのです。
例えば、2022年度の売上高は、全世界で240憶ドル(約3兆3312億円)に達するとみられており、ZARA、H&M、ユニクロ等の世界3大ファストファッションブランドを抜くかもしれないとささやかれているのです。
それでは、女性ファッションの中でも、ずば抜けて高級なブランドであるLVMH(ルイビトン他)の2021年の売り上げは、どの程度でしょうか?
日本円に換算すると、約8兆3千億円(642億ユーロを1ユーロ129.8293円で換算すると)で、現在のシーインの約3倍はあります。
でも、日本の一流経済誌「東洋経済」では、もし、シーインの売り上げがずっと順調なら、そう遠くない未来にLVMH(ビトングループ)を追いつくのではと言っています。
例えば、人気度から言っても、2022年4~6月期のアプリのダウンロード数の増大は、アマゾンを抜いたという報道もあるくらいなのです。
シーインの日本上陸、あっという間にZ世代の心をワシづかみ
さて、2021年夏に日本語版のシーインにアクセスできるようになったとたん、Z世代(現在10代中盤から25歳くらいまで)、の若者を中心に、日本にも「シーインブーム」がやってきました。
今やシーインは、金銭的にあまり余裕のない若いZ世代の世界的な御用達ブランドを超えて、多くの人から愛されるブランドになりつつあるのでは、と思えるほど。
シーインの洋服を数回買ったことがあると話す20代の女性は「お洋服はナチュラルビューティーベーシックやナノユニバースが好きですが、安くて良いサイトがあれば、積極的に利用したいです」とのこと。
今までは、中くらいのブランドを好んで買い求めていたけれど、低価格帯のシーインが既存のブランドよりファッショナブルなら、シーインの方を買うという風に消費行動を変えた20代のお嬢さんもいるようです。
なぜ、シーインは価格破壊が可能になったかについての仕掛けは後述致します。
常設のショールームもインスタ映えを意識して!
シーインは、対面形式の店舗を持たず、インターネットのみの販売です。但し、原宿キャットストリートには、2022年11月13日常設ショールームがオープンしました。
これは、商品を直接売らずにじっくり商品をみていただこうという趣向なのです。350点もの女性服、小物、コスメ、子供用品、が展示されています(プラスサイズもあり)。
その商品のタグに掲載されたQRコードをスマホで読み込み、シーインのウェブサイトやアプリで購入してもらおうというもの。
あくまでもSNSの映えを意識した空間で、フォトブースで試着したまま撮影ができるようになっていて、直接のお金のやりとりはありません。
インターネットでは、モデルではなく、インフルエンサー(SNSでのフォロワーが比較的多い)やユーチューバーがシーインを着て思い思いのポーズをとっています。
今まで、GUやしまむらで買っていた低価格帯のファンたちが、SHEIN(シーイン)のマーケットに流れ込んだというべきでしょうか。
中高生にも人気で、シーインでインフルエンサーが着ている服を自分のお小遣いで買うそうです。カードを持たない中高生はコンビニ決済とのこと。
シーインの秘密 なぜファッショナブルなのに低価格か?
シーインでは、①中国国内で企画、製造、流通までのすべてをおこなっています。
だから、価格帯は「ZARA」の4分の1,「H&M」の2分の1に抑えられているのです。
②商品のラインアップはTikTokなどのSNSのデータを徹底的に分析し、AIを活用しています。そうやって、10代から20代のニーズに合うよう原料から製品を作っているのです。
③とりわけ、体格の良いアメリカ女性に合うよう製品が作られているので、婦人服のドレス部門は、Pettie XXS からXXXLまでと、トレンディーな服作りに力を入れているブランドにしては、思いのほかサイズが豊富に揃っています。
④直営業の店舗を持たず、オンラインのみのファッションブランドとしては、世界で一番大きいのです。
消費者とダイレクトにつながる無店舗ファッションでは世界には成功例があります。が、ファストファッションの世界で無店舗展開を成功させた例はシーインが初めてとか。
また、業界用語でいえば、D2Cモデル知られています。
D2Cとは、「Direct to consumer」の略で、「製造者が自ら企画、製造した商品をどこの店舗も介さず、自社のECサイトで直接顧客へ販売するビジネスモデルとのこと」。
以上①~④が、シーインの成功の秘密です。
シーインの欠点としては、縫製が悪い、アイロンがかかっていないなどの批判がありますが、
一回しか着ないドレスなどは、プチプラ(小さいプライス、つまり安い)のシーインで十分重宝していますとの声も耳にします。
大人のシーイン愛好者ならではの感想で、そういえば他のブランドに比べて、ワンピース型のドレスが多いのも特徴の一つ。
まとめ シーインの成功は、大胆な経営戦略とSNS!
- 第3章に述べたように、生産、デザイン、製造、流通過程をすべて中国でまかなっていること。
- AIなどのハイテク技術によるニーズの分析。
- 有名モデルには頼らずインフルエンサーの活用など、いままでのファッション業界では見られない試みが数多くなされているのです。
まれにみる物価高の中でも、シーインは世界中の若い女性の財布のひもを緩め、彼女たちの熱い視線を独り占めにしています。
本当にLVMHを売上高で抜く日も遠くない未来かもしれません。
by sono
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